「SolidWorksが使えるようになったら、家で働けるのかな」
そう思って検索された方が多いのではないでしょうか。私もまったく同じことを考えていた一人です。
私は40代の機械設計者です。転職を経て、今は本業でSolidWorksを使いながら、在宅でCADの副業もしています。
ただ、先に正直なことを書いておきます。
副業で大きく稼げているわけではありません。依頼が来る月もあれば、まったく来ない月もあります。「CAD副業で月◯十万円!」という景気のいい話は、少なくとも私からは出てきません。
在宅CADは、やってみると分かりますが、そんなに甘くはないというのが実感です。
それでも「自宅で図面を描いて報酬をいただく」ことは、実際にできています。この記事では、その現実的なところを、良いことも面倒なことも含めて書きます。
ベテランが上から教える記事ではありません。同じところで迷っている方の、判断材料になればうれしいです。
結論:SolidWorksでの在宅ワークはできる。ただし壁がある
先に結論からお伝えします。
- 在宅でCADの仕事そのものは、確かに存在します
- SolidWorksは求人や案件募集でよく名前を見るソフトのひとつです
- ただし「ソフトが使える」だけでは、なかなか仕事になりません
- そして意外なことに、最初の壁は技術力ではありません
私が調べたり実際に動いたりして一番驚いたのが、この最後の点でした。
在宅CADで最初にぶつかる壁は、腕前ではなく「ライセンス」です。
どういうことか、順番に見ていきますね。
在宅CADの仕事って、そもそもどんな内容?
「CADの在宅ワーク」と一口に言っても、中身はいろいろあります。私が実際に受けたり、募集を見かけたりするのは、こんな仕事です。
- 図面作成:既存の図面の修正や、3Dモデルからの2D図面化
- 3Dモデリング:部品や装置のモデルを作る仕事
- BOM(部品表)作成:製品に必要な部品を一覧表にまとめる作業
- 設計相談・図面チェック:経験を活かしたアドバイス業務
意外に思われるかもしれませんが、華やかな「ゼロから設計」よりも、地道な修正やモデリングの仕事のほうが数は多い印象です。
これは決してがっかりする話ではありません。むしろ逆で、いきなり大きな設計を任されるわけではないぶん、在宅ワークの入口としては入りやすいということでもあります。
私自身も、最初は小さな図面作成から始まりました。
SolidWorksで在宅ワークを始めるのに必要なもの
必要なものを4つに整理しました。ひとつずつ見ていきます。
① ライセンス(これが最大の壁)
冒頭でお伝えした「最初の壁」がこれです。そして、ここがこの記事で一番お伝えしたいところでもあります。
SolidWorksには個人向けに「SOLIDWORKS for Makers」という提供形態があります。年1万円前後で使えて、個人が3D CADに触れるにはとてもありがたい選択肢です。私も自宅ではこれを使っています。
では、これで在宅ワークができるのか。ここが肝心なところです。
結論を先に言うと、「学習には最高。でも受託の仕事には使えない」です。
まず、よく誤解されている点から。「個人利用版だから1円も稼いではいけない」わけではありません。公式のFAQには、こう書かれています。
you may sell items you make for a profit up to and not exceeding US$2,000 a year
(作ったものを販売して得る利益は、年間2,000米ドルまで)
日本円にするとおよそ30万円ほど。「じゃあ30万円までなら仕事を受けていいんだ」と思いますよね。私も最初はそう読みました。
でも、よく見ると items you make(自分が作った物品) と書かれています。
つまりこれは、自分で作ったものを販売する場合の話です。3Dプリンタで小物を作って売る、といったイメージですね。
お客様から依頼を受けて図面やモデルを作る「受託の仕事」は、この枠に入りません。 金額の大小以前に、Makers版の大前提である「personal projects and non-commercial use(個人的なプロジェクトと非商用利用)」から外れてしまうからです。
間違えやすいところなので、もう一度書きます。「年30万円までなら仕事を受けてOK」ではありません。
そして、金額よりも実務でこたえるのがもうひとつの制限です。
Files and data created with your Maker account are digitally watermarked and can only be opened with a 3DEXPERIENCE SOLIDWORKS for Makers license
(Makerアカウントで作ったファイルには電子透かしが入り、Makersライセンスでしか開けません)
つまり、Makers版で作った図面やモデルは、お客様の商用版SolidWorksでは開けないのです。
これは在宅ワークにとって、収益の上限より深刻かもしれません。CADの仕事では「編集できるデータで納品してください」と言われることが多いからです。STEPやIGESといった中間フォーマットでのやりとりはできますが、それで良いかは相手次第です。
私も会社のSolidWorksと自宅のMakers版を行き来していて、ここは実際に困りました。
ちなみにFusion 360の個人用も、年間の売上に上限が設けられていて、本業や会社での使用は認められていません(条件はSolidWorksとは別です)。どちらも「学習のための入口」であって、「仕事道具」ではないと考えるのが安全です。
では現実的にどうするのか。選択肢はこうなります。
- 委託先からライセンスを貸してもらう:業務委託の契約で、発注側が用意してくれるケース。在宅CADの案件では、この形が現実的です
- 商用ライセンスを自分で用意する:費用は相応にかかるので、仕事の見込みが立ってからで十分です
- Makers版は「学習用」と割り切る:これが一番おすすめの入り方です
私自身は、3つ目から入りました。転職活動をしていた時期にMakers版で練習していたおかげで、新しい職場でSolidWorksを触ったときスムーズに入れました。
そして今、副業で受けている案件は1つ目の形です。委託先からライセンスを貸していただいています。
つまり私の場合、こう使い分けています。
- 本業:会社のSolidWorks
- 副業:委託先から貸与されたライセンス
- 自宅の学習:SOLIDWORKS for Makers
少しややこしく見えるかもしれませんが、この線引きさえ守っていれば、迷うことはありません。
学習と実務で、ライセンスを分けて考える。 遠回りに見えて、これが一番確実です。
なお、ここに書いた金額や条件は2026年7月時点のもので、改定されることがあります。契約の前に必ず公式サイトで最新の規約を確認してください。 為替でも円換算額は変わります。
FusionとSolidWorksのライセンス比較は、【2026年版】FusionとSolidWorksどっちがおすすめ?に表でまとめています。どちらから始めるか迷っている方は、そちらもどうぞ。
PC環境
3D CADは、正直パソコンを選びます。メモリやグラフィック性能が足りないと、モデルを回すだけでカクついてストレスになります。
私が在宅CAD用に整えたPC環境については、CAD副業におすすめの作業環境まとめで詳しく書いています。これから買い替えを考えている方は参考にしてみてください。
通信環境
見落としがちですが、これが地味に重要です。
在宅の仕事では、大きなCADデータのやりとりが発生します。データのアップロードや、打ち合わせのオンライン会議が途中で止まると、それだけで信用に関わります。
私は格安SIMを使っていますが、時間帯によって速度が落ちる問題には実際に悩まされました。その経験は日本通信SIMが昼に遅い理由と3つの対策にまとめました。通信費を抑えつつ在宅で働きたい方は読んでみてください。
「見せられるもの」
これが最後の、そして意外と大きなポイントです。
採用する側は「SolidWorksが使えます」という言葉ではなく、実際に作ったものを見たいのです。
とはいえ、いきなり立派な作品集を用意する必要はありません。私の場合は、練習で作ったモデルや図面を少しずつ残していきました。身近なものを測って再現するだけでも、立派な練習になります。
納品形式で、必要なライセンスは変わる
ここまで読んで「結局いくらかかるの?」と思われたかもしれません。
実はこれ、「どの形式で納品するか」で答えが変わります。 私が一番お伝えしたい実務のコツです。
| 求められる納品形式 | 必要になるもの |
|---|---|
| STEP・IGESなどの中間フォーマット | 無料のCADでも対応できる場合がある |
| Fusion 360のネイティブファイル | Fusionの商用ライセンス |
| SolidWorksのネイティブファイル | 商用ライセンス、または貸与 |
中間フォーマットで良いなら、選択肢はぐっと広がります。 FreeCADのような無料で商用利用もできるソフトで3Dモデルを作り、STEPで書き出す。これで成立する案件もあります。「SolidWorksがなければ在宅CADはできない」わけではないんです。
一方、「編集できるネイティブデータで納品してください」と言われたら、そのソフトの商用ライセンスが要ります。 ここで現実的な差が出ます。
正直に書きますね。Fusion 360の商用ライセンスは、稼ぐ金額によっては個人でも手が届く範囲だと思います。でもSolidWorksの商用ライセンスは、私は個人では無理でした。 桁が違います。
だから私の副業は、委託先からライセンスを貸していただく形に落ち着きました。
案件の相談を受けたら、早い段階で「納品形式は何ですか」と聞いてみてください。 そこで必要なものが決まります。ソフトを揃えてから仕事を探すより、ずっと確実です。
実際にやってみて感じた、在宅CADの良いところ
正直な感想を書きますね。まずは良かった点から。
通勤時間がゼロになるのは、想像以上に大きいです。往復2時間かかっていた時間がそのまま自分のものになります。この時間で勉強もできますし、家のこともできます。
それから、自分のペースで進められること。集中できる時間帯は人それぞれですが、在宅なら「自分が一番調子のいい時間」に作業を寄せられます。
そして、本業で得た経験がそのまま活きること。設計の現場で身につけた「こう作ると加工しやすい」といった感覚は、独学だけではなかなか身につきません。この点は、実務経験がある方の強みです。
正直、ここはきついと感じています
良いことばかり書くのはフェアではないので、しんどい部分も書きます。
まず、聞ける人がそばにいません。 会社なら「これどうやるんですか」と隣の席で聞けたことが、在宅では自分で解決することになります。
ただ、ここは最近だいぶ変わりました。私は分からないことをAIに聞いています。操作方法やエラーの原因を調べる相手としては、なかなか頼りになります。
とはいえ、AIにも答えられないことがあります。その会社の図面のルール、お客様の好み、現場の暗黙の了解。 こういうものは人にしか聞けません。ここは今も自分で確かめるしかない部分です。
私がSolidWorksの操作でつまずいた話をブログに書いているのも、半分は自分用のメモです。
次に、時間の管理が全部自分の責任になること。本業がある状態での副業なので、夜や休日に作業することになります。「今日は疲れたからやめておこう」が続くと、あっという間に納期が近づきます。
そして、仕事が安定して来るとは限らないこと。毎月同じだけ依頼が来るわけではありません。私も、請求書を出す月と出さない月があります。
これから始める方には、最初から「これで独立する」と気負わないほうがいいとお伝えしたいです。本業を持ちながら、少しずつ実績を積むくらいがちょうどいいと感じています。
向いている人・向いていない人
ここまでの話をふまえて、正直な線引きをしてみます。
向いていると思う人
- 設計や製造の実務経験がある方(未経験からより、かなり有利です)
- ひとりで黙々と作業するのが苦にならない方
- 分からないことを自分で調べるのが苦にならない方
- 本業を持ちながら、少しずつ育てるつもりでいる方
少し慎重に考えたほうがいい人
- すぐにまとまった収入が必要な方
- 誰かに教えてもらいながら進めたい方
- 締め切りを自分で管理するのが苦手な自覚がある方
厳しく書きましたが、下に当てはまるからダメということではありません。私も締め切り管理は得意なほうではないので、カレンダーとタスク管理に頼っています。苦手なところは、仕組みで補えます。
これから始めるなら、私はこの順番で進めます
もし今からやり直すとしたら、こういう順番にします。
- まず3D CADの考え方に慣れる(ソフトは問わない。無料で使える範囲から)
- スケッチなど基本操作を確実にする(ここを飛ばすと後で必ず詰まります)
- 練習したものを残していく(見せられるものが少しずつ貯まります)
- PC・通信環境を整える(仕事を受ける前に)
- 小さな案件から受けてみる(いきなり大きい仕事を狙わない)
特に2番目は大事です。私はスケッチの理解が甘いまま先に進んでしまい、後から戻って勉強し直しました(SolidWorksのスケッチ基本ガイドにまとめています)。基本ほど、あとから効いてきます。
まとめ
SolidWorksで在宅ワークはできるのか。私の現時点での答えはこうです。
できます。ただし「ソフトが使えること」はスタートラインで、ゴールではありません。
ライセンス、PC、通信環境、そして見せられる実績。この4つを揃えていく地道な作業のほうが、実は本体だったりします。
特にライセンスは、あとから「知らなかった」では済まない部分です。個人利用版は学習のため、仕事を受けるなら商用ライセンス。 ここだけは、最初にはっきりさせておいてください。
冒頭にも書いたとおり、私は在宅CADで大きく稼げているわけではありません。日々まだ勉強中ですし、えらそうなことは言えません。
それでも、自宅で図面を描いて報酬をいただくことは、実際にできています。金額は小さくても、「会社の外でも通用した」という実感は、思っていたよりずっと大きいものでした。
夢のある話に見せるつもりはありません。でも、堅実に一歩ずつなら、進める道だとは思います。
まずは無料で使える3D CADから触ってみて、「これなら続けられそう」と思えるかどうか確かめてみるのがおすすめですよ。
焦らず、少しずつ進めていきましょう。
